rTMS療法を受ける際の留意点について
現在、rTMS療法の需要が高いため、最初のrTMS初診・評価から最初のrTMS治療セッションを受けるまでに数週間かかる場合があります。rTMS療法による十分な治療効果を得るためには、通常フルコースの20~30セッションのrTMSが必要です。rTMSは月曜日から土曜日のうちの週5日間で実施されるため、rTMS療法1コースにつき4~6週間かかります。治療セッション時間は、提供される治療の種類に応じて、15~60分間続きます。クリニックの開院時間が曜日ごとに決まっているため、これらの営業時間外にrTMS治療を提供することはできません。
rTMS治療開始後、rTMS療法が患者さんに有用であるかどうかを確認するために、定期的な臨床評価以外に、2週に1回の精神科診察を実施致します。診察結果に応じて、rTMS療法継続の可否を判断致します。またrTMS療法コースが終了後も2週間おきにフォローアップ診察を計3回実施致します。その時の状況に応じて、追加のrTMS治療を検討することがあります。
rTMS療法中の活動制限について
rTMS療法を受けている期間中に特定の活動を制限する必要はありません。殆どの患者さんが、rTMSセッション受療後に特に休憩を取ることなく、通常の日常生活に戻ることができます。rTMS治療前後での自動車の運転に関して制限はありませんし、公共交通機関による移動も特に問題ありません。一部の患者さんにおかれましては、最初の2-3回のrTMSセッションにおいて、家族や友人に同伴してもらうことを好む方もいらっしゃいますが、rTMS治療自体には同伴者は特に必要ありません。仕事をされている患者さんにおかれましては、rTMS治療スケジュールと勤務時間の調整が付くようであれば、rTMS治療を受けるために休職をする必要はありません。
rTMS治療に伴う刺激部痛について
rTMSの最も一般的な副作用は、刺激セッション中の刺激部痛です。rTMSは脳を刺激するだけでなく、TMSコイル近くの頭皮・額・顔の筋肉や神経も一部刺激してしまいます。これによって側頭筋や顔面筋の収縮に伴う痛みや不快感が生じます。これまでの研究報告では、rTMSに伴う痛みで治療に耐えられなくなってしまうケースというのは、全患者のうち約3%程度と言われています。一部の患者さんは、治療セッション終了後に疲労感や軽度の頭痛を訴えることがあります。ただし、それらの症状が長時間持続することはありません。また、偏頭痛の既往がある患者さんの場合には、rTMSに伴う頭痛の悪化や数日間持続する頭痛が出現することは有り得ます。
rTMS治療の潜在的なリスクについて
大多数の患者さんにとって、rTMS治療に伴う深刻なリスクというのはありません。rTMS治療の初回または2回目のセッション中に、極少数の患者さんにおいて、一時的な失神を起こす方がいらっしゃいます。その多くは過度の緊張・不安あるいは体調不良に伴う迷走神経反射によるものと考えられています。非常に稀なリスクに、rTMS療法に伴う軽躁化があります。一方、rTMS療法の最も深刻な既知のリスクには、rTMS療法中のけいれん発作の誘発があり、1万人に1人の確率で生じうると考えられています。ちなみに、比較の参考までに、抗うつ薬におけるけいれん発作誘発の危険性は1,000人あたり約1名以上と言われています。
他方、rTMSによる脳刺激中のけいれん発作誘発のリスクは報告されていますが、rTMS自体が刺激と関係なく自然にけいれん発作を引き起こすようになるといった、てんかん原生を刺激部位に生じさせるというエビデンスはありません。むしろ、海外では、てんかんの治療法として、抑制性のrTMS刺激を臨床応用する研究が近年進められています。
新宿駅から公共交通機関あるいは自動車で2時間以上かかる場所に お住まいの方に対しては、以下に述べるいくつかの理由で 当クリニックでの治療をお勧め致しません
最初のrTMS初診外来を受診することができたとしても、その後の急性期rTMS療法は開始後、継続的に6週間通院する必要があります。その後の持続療法(ブースター治療)の可能性も考慮すると最低2か月間の治療期間を見ておく必要があります。
また、rTMS療法はすべての患者さんに適しているわけではありません。うつ病の場合、20%程度の患者さんには効果がなく、別の40%程度の患者さんには部分的な改善しか見られません。また、うつ病以外の他の精神疾患に関しては、まだ研究段階ということもあり、rTMS療法による奏効率はうつ病よりも低くなる可能性があります。
rTMS療法が奏功しても、効果は必ずしも永続的なものではありません。通常、rTMS療法の効果は約4~12か月続きますが、場合によっては2~3か月で再燃再発するケースもあります。その場合、ブースターセッションによる持続療法の実施が必要になってきますが、東京近郊にお住まいでない方の場合、適切なrTMS治療の継続が困難となります。
新宿駅から公共交通機関あるいは自動車で2時間以上かかる場所にお住まいの患者さんの場合、以下の条件を満たすことができる方のみ、当クリニックでのrTMS療法の実施が可能になります。
・新宿までの往復の交通費と2~3か月間の新宿近郊での宿泊の手配ができる方。
・rTMS療法が奏功しなくとも、これらの費用を負担する準備ができている方。
・rTMS療法が奏功した場合に、持続療法や維持療法を物理的に継続できる方。