うつ病depression
うつ病は気分の落ち込みや楽しみの喪失、絶望感、罪悪感、睡眠障害、食欲減退または増加、注意力の散漫、記憶力の低下、体の痛みなど様々な症状を呈する精神疾患です。うつ病の有病率は約7%と言われており、大きな社会問題となっています。うつ病の治療には現在抗うつ薬を中心とした薬物療法や認知行動療法といった精神療法が中心となっています。しかし、それらの治療によっても約半数の方は症状が十分に改善せず、治療抵抗性のうつ病に苦しんでいます。そのため、当院では抗うつ薬や認知行動療法といった治療に加えて、従来の抗うつ薬治療では十分に反応しなかった治療抵抗性のうつ病の方を対象にrTMS治療やMAO阻害薬を使用した治療を準備しております。
rTMS治療は、特殊なコイルに電流を流すことで磁場を発生させ、その磁場から誘導された微弱な電流を標的とした脳部位に流すことで、機能が低下している脳部位を活性化させ、治療効果を発揮する治療技術です。rTMSはカナダ保健省からは2002年に医療機器として承認され、米国FDAからは2008年に1剤以上の抗うつ薬に反応しない治療抵抗性うつ病に対する治療法として承認されています。現在、特に欧米を中心にrTMS治療は治療抵抗性うつ病に対する新しい治療法として医療現場や臨床研究で積極的に使用されていますが、日本ではまだ黎明期にあり、研究開発段階にあるところが多い状況です。そこで当院では、治療抵抗性うつ病で苦しんでいる患者さんに一早く最新のrTMS治療を届けるべく、慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室MTRラボとも緊密に連携しながら、各種ニューロモデュレーション治療を提供しております。
MAO阻害薬は複数の抗うつ薬でも十分に効果が得られなかった治療抵抗性のうつ病に有効であることが多くの研究で示されており、海外では現在でも有用な選択肢のひとつになっています。また、MAO阻害薬には治療抵抗性のうつ病以外にも抑うつ症状の再発・再燃予防や非定型うつ病のタイプにも有効であることが示されております。非定型うつ病とは寝過ぎてしまう、食欲が出過ぎるといった症状や体がなまりのように重く感じられるといった症状が主体となるうつ病の一種で、現在日本で使用されている抗うつ薬では有効でない場合が多くございます。しかし、MAO阻害薬は日本では未承認薬であり、患者さんに行き渡っておりません。当院では日本においても治療抵抗性のうつ病の方や非定型うつ病の方への治療に役立てられるようMAO阻害薬での治療を準備しております。