認知症dementia
認知症は「一つ以上の認知領域(複雑性注意、遂行機能、学習および記憶、言語、知覚-運動、社会的認知)において以前の行動水準から比して明らかに低下する疾患」と定義されます。この定義では少々わかりにくいですが、簡潔に言えば「今まで当たり前にできていたことが難しくなってくる」病気です。
物忘れが最も気付きやすい自覚症状ですが、他にも”仕事や家事の能率が下がった”、”今まで使えていた電子機器が使えなくなった”、”道に迷ってしまう”、”車をぶつけてしまうことが増えた”、”言葉が出ない”、などの症状から診断されることもあります。家族から見て”性格が変わった”、“ぼーっとしていることが増えた”と指摘されて受診するケースもあります。
認知症診断でまず大事なことは、他の病気と区別することです。認知症と間違えられやすい意外な病気として小さい脳梗塞や脳出血、甲状腺機能低下症、てんかんなどがあります。またうつ病の初期症状との区別は難しいことがあります。しっかり状況を整理してそれらの病気と区別し、必要であれば専門的な治療が必要です。
認知症で最も多いのは記憶の障害が目立つアルツハイマー型認知症ですが、一言で認知症といっても脳のどの部位が障害されるかで症状もかわり、それに対応して認知症の病名も変わってきます。
近年話題になっているのが、「軽度認知障害」と呼ばれる、加齢による変化から認知症へと進行していく段階です。いわば正常と認知症の中間といえます。この段階で早期発見することが、病状のさらなる進行予防に有用と考えられ様々な試みがされています。
治療は薬物療法と認知リハビリテーションに加えて病状に合わせて環境調整をしていくことが多いです。ニューロモデュレーションも有効な可能性があり今後さらなる検討が必要です。
当院では、まず認知症もしくは軽度認知障害なのかどうか、じっくりと時間をかけて整理していきます。その上で高度な検査が必要であれば大学病院と連携して行なっていきます。ご本人が受診に抵抗されることも多いですが、まずはご家族のみで相談にいらしても構いません。ぜひ一度不安な症状について相談にいらしてください。